共有不動産のリフォームは勝手にできる?
共有持分のある不動産において、「リフォームしたい」と思っても、自分ひとりの判断では進められないケースが多いのが実情です。
不動産が共有名義になっているということは、物理的な建物だけでなく、その利用・処分に関する権利も複数人で持っている状態です。したがって、たとえ費用を自分で全額負担するつもりでも、他の共有者の合意なしに手を加えることは、法的にもトラブルの原因にもなります。
共有不動産における合意の基本ルール
不動産の種類や共有状態によって、必要となる「合意の範囲」が異なります。とくにリフォームに関しては、以下の分類を理解しておくことが重要です。
単純な修繕と構造変更の違い
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軽微な修繕(雨漏りの修理、クロス張替え等):共有者の一部の同意でも進められるケースあり
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構造に関わる改修(間取り変更、外壁工事、大規模リフォーム):共有者全員の同意が必要
民法上の規定(民法第251条)
「共有物に変更を加えるには、共有者全員の同意を要する。」
これは、「変更」とは物理的な変化だけでなく、価値や使用状況の変更も含むという解釈がされています。

はい。共有物件の場合、勝手に工事するとトラブルのもとになります。合意形成が大前提です。
合意形成が難しいケースとその対策
よくあるトラブル事例
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一人だけが使用しているが他の共有者が反対
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費用負担の分配で揉める
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リフォーム後の賃貸活用など利用目的の違い
こうした状況では、合意が取れない限り法的には進められません。そのため、共有関係を解消したり、使用権の整理を検討することも視野に入れましょう。
解決策の選択肢
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使用賃貸借契約を結ぶ(使用者と他の共有者の関係を明確に)
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共有持分の買取や放棄による名義整理
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家庭裁判所への共有物分割請求
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問題の種類 | 対応方法 |
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合意が得られない | 共有物分割請求(裁判)や持分売却 |
工事費用を出してくれない | 自己負担+合意書作成による法的担保 |
利用目的が食い違う | 賃貸計画を明示し、収益配分案を提示する |
リフォーム時に必要な準備とは?
共有不動産でのリフォームを円滑に進めるには、以下の3つのステップが欠かせません。
1. 共有者全員との話し合い
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目的、予算、スケジュールを明示
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書面化(合意書や覚書)によるトラブル予防
2. 法律的なチェック
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建築基準法、用途地域の制限など
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特に古い物件は増改築ができないケースも
3. 専門家への相談
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司法書士:持分の整理・登記
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弁護士:契約内容のチェック
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建築士:現実的なリフォーム設計
リフォームの意思決定が揉めたケースとその解決策
共有不動産のリフォームに関するトラブルは、家族間・兄弟間でも頻繁に発生しています。以下は実際に起きた典型的なケースです。
実例:兄弟間でリフォーム費用を巡る対立
ある相続物件を兄弟3人で共有していたケース。長男が居住しており、老朽化した部分の修繕を提案。しかし、次男・三男は費用を負担したくないとの理由で反対。結局、長男が全額負担で工事を行いましたが、工事内容が事前合意と異なるとして後日トラブルに発展。
このような事例を防ぐためには、書面による合意と、事前の説明責任が極めて重要です。
合意が取れない場合の法的な対処法
合意が取れず、なおかつ物件が老朽化している場合、以下のような法的手段も検討対象となります。
1. 共有物分割請求(民法第258条)
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一人の共有者からでも家庭裁判所に申し立て可能
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分割方法には「現物分割」「換価分割」「代償分割」がある
2. 持分売却という選択肢
共有持分だけを第三者(買取業者など)に売却し、関与を解消する手もあります。
合意形成を成功させる3つのコツ
共有リフォームでトラブルを防ぎ、スムーズに進めるためには交渉の工夫が不可欠です。
1. メリットを明確に伝える
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物件価値の上昇
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将来的な売却価格アップ
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使用者の負担軽減
2. 工事後の影響を説明する
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音、振動、工事期間中の制限
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改修内容の影響(間取り変更や内装)
3. 専門家を交えて中立的に進める
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弁護士や不動産コンサルが入ることで感情的な対立を避けやすくなる

住んでる私が一番困ってるのに、全然協力してもらえなくて…。費用も全部自分で出すつもりなんですけど。

たとえ費用を全額負担する場合でも、共有不動産に手を加えるには合意が必要です。書面で明文化すればトラブル回避につながります。
まとめておきたい!共有不動産リフォーム時のポイント
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項目 | 対応内容 |
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合意の必要性 | 構造変更を含むリフォームは共有者全員の合意が必要 |
書面化 | 口頭の合意では不十分。覚書・同意書などの作成が安心 |
対応策 | 使用契約・持分売却・法的手続きなど状況に応じた方法を選ぶ |
誰に相談するか | 弁護士、不動産業者、建築士など専門家の力を借りる |
共有不動産のリフォームには、共有者全員の合意が原則必要です。軽微な修繕なら一部同意でも進められるケースもありますが、構造変更を伴う場合は必ず書面での同意が求められます。トラブルを防ぐためにも、専門家に相談しながら慎重に進めることが重要です。放置すると修繕も売却もできなくなる恐れがあるため、早めの対処がカギとなります。
住みやすくしたいだけなのに、兄弟に断られたらリフォームできないってこと?