共有名義を手放すには?放棄の落とし穴と現実的な対応策

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共有持分を放棄したい方へ。名義や責任のリスクと対応策を図解で解説!
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共有持分の放棄はできるのか?基本的な考え方

共有名義の不動産を保有している方の中には、「手放したい」「放棄できないか」と考える場面があります。しかしながら、共有持分の「放棄」は非常に限定的な状況でしか成立しません

ここで言う「放棄」とは、相続放棄のように一切の権利と責任を手放し、名義からも外れることを意味する場合が多いでしょう。しかし、不動産の共有持分の扱いは相続とは異なり、放棄=名義削除にはなりません

共有持分を放棄することは基本的にできない

法律上、民法第255条では「財産の放棄」は一定の要件を満たせば可能とされていますが、これは「相続財産」や「法人の清算」などの特殊な状況を想定したものであり、通常の不動産共有では適用されません

不動産登記上の共有者は、自らの意思で勝手に名義から外れることはできず、他の共有者や第三者に対する移転登記が必要です。つまり、共有持分を手放すには「売却」または「譲渡」しか現実的な手段はないのです。

税金ばかりかかって何も使えない共有不動産を放棄したいんですが、勝手に登記を外すことってできますか?

ご自身の判断だけで登記を消すことはできません。放棄ではなく、適切な方法で名義の整理や売却を検討する必要があります。

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放棄を希望する理由と背景

共有持分の放棄を望む方の多くは、以下のような悩みや負担を抱えています。

  • 他の共有者との関係悪化で不動産を活用できない

  • 税金(固定資産税・都市計画税)の支払い義務だけが残る

  • 管理や修繕費などの負担が発生している

  • 賃貸や売却などの意思決定が進まない

実際にこれらの要素が重なると、心理的にも経済的にも手放したくなるのは自然な感情です。しかし、「放棄」という手段だけにこだわると、解決の糸口を見失いがちになります。


放棄できない場合の対応策とは?

共有持分を放棄できない場合、次のような対応策を検討するのが現実的です。

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対応策 内容
売却(持分のみ) 他の共有者または第三者に持分だけ売却
贈与 無償で他者に譲渡する(贈与税の発生に注意)
分筆・分割協議 物理的に分けられる場合は分筆登記を検討
任意売却 全体売却に向けて共有者間で協力する

中でも「共有持分のみを売却する」という手段は、近年では専門業者の登場により以前よりもハードルが下がってきています。他の共有者との合意が得られない場合でも、売却交渉の道は残されています。


注意点①:放棄とみなされる行為にもリスクがある

たとえば「自分はもう使わないから」と管理費や税金を支払わない行為や、名義変更を放置する行為は、結果的に法的トラブルの火種となる可能性があります。

特に共有者の一人が死亡した場合など、次世代に問題が引き継がれることもあり、「何もしない」ことが最大のリスクになりかねません。

  • 共有持分 放棄

注意点②:共有者の同意がないと処分が進まない

共有名義の不動産では、持分を放棄したいと思っても他の共有者の理解と協力がない限り、名義整理や売却は思うように進みません。

とくに以下のようなケースでは、放棄希望者が単独で進められることに限界があります。

  • 他の共有者が放棄や譲渡に消極的

  • 共有者の一人が行方不明

  • 共有者間の感情的対立がある

  • 相続登記が未了のまま放置されている

兄と共有している古い家なんですが、放棄したくても全然話が通じなくて…。どうしたらいいでしょう?

そのような状況でも、専門業者を介して共有者との交渉を進めることで、合意形成や持分の整理につながるケースは多くあります。


注意点③:放棄では税金や責任から逃れられない

多くの方が誤解しがちですが、名義をそのままにして**「もう関わらない」と決めても、法律的には共有者のままです。**

このため、以下のような義務は引き続き発生します。

  • 固定資産税や都市計画税の請求

  • 管理義務・修繕協議への参加

  • 他の共有者が行動を起こした際の同意や拒否の意思表示

放棄する=責任を免れるという考えは危険です。名義が残る以上、法的にも税務上も共有者として扱われ続けます。


放棄できないなら「譲渡・売却」で解決へ

もし共有持分の放棄が難しい場合は、以下のような積極的な選択肢に目を向けましょう。

  • 共有者への譲渡

    • 感情的な対立がなければ、話し合いで名義の整理が可能

  • 第三者への売却

    • 共有不動産に詳しい買取業者に相談すれば、他の共有者の同意なしで売却できることもある

  • リースバック・等価交換などの提案

    • 共有者との関係によっては、譲渡と引き換えに別の対価を交渉することも可能

再建築不可や事故物件の売却方法を解説した図解アイキャッチ画像


まとめ
不動産の共有持分は、個人の判断だけで放棄することは基本的にできません。放棄の代わりに、売却や譲渡といった手段を通じて名義整理を行うのが現実的な選択肢です。放置することで税金やトラブルのリスクが高まるため、専門家に相談しながら早めの対処をおすすめします。