路線価と実勢価格はどっちが正解?共有持分の評価方法を徹底比較!

共有持分の評価方法を路線価・実勢価格・収益還元法で比較した日本語イラスト
路線価・実勢・収益還元…価値の出し方で差が出る!
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共有持分の評価方法とは?専門家も注目する3つの手法を徹底比較

共有持分の評価が重要な理由

不動産の共有持分を手放す際や相続時において、正確な評価は避けて通れないプロセスです。特に第三者に持分を売却したり、他の共有者と持分の買取交渉を行う場合、評価方法によって金額に大きな差が生じることがあります。

評価が不適切であると、税金の負担が増すリスクや、取引価格が不当に安くなる可能性すらあるため、正しい手法の理解が不可欠です。

ここでは、共有持分の評価に用いられる代表的な3つの手法について、それぞれの特徴と違いを整理しながら解説します。


評価方法① 路線価方式

概要と特徴

路線価方式は、相続税や贈与税の計算に用いられる国税庁が定めた価格を基準とした評価方法です。土地に面する道路ごとに単価(1㎡あたりの金額)が定められており、評価の基準が明確である点が特徴です。

メリット

  • 税務上の評価基準として使われるため、相続や贈与との整合性がとりやすい

  • 公的な基準に基づいているため、誰でもアクセスでき、確認可能

デメリット

  • 市場価格(実勢価格)に比べて低めに設定されていることが多い

  • 不動産の状態や活用のしやすさなどが反映されない

路線価の調べ方

国税庁の「路線価図・評価倍率表」から、地番やエリアを指定して検索可能です。具体的な金額を確認することで、概算の持分価格が算出できます。

共有持分の売却費用とチェックリストをテーマにした日本語の情報グラフィック


評価方法② 実勢価格方式

実勢価格とは?

実勢価格とは、実際の不動産市場で売買されている価格をもとに評価する手法です。不動産ポータルサイトや、近隣の取引事例などを参考にして評価額を決定します。

メリット

  • 現実の売買価格に基づくため、市場に即したリアルな評価が可能

  • 持分を第三者に売却する際、説得力がある

デメリット

  • 公的な資料ではないため、評価者の主観が入りやすい

  • 過去の取引事例が入手しにくい地域では参考情報が不足することも

注意点

共有持分の取引は通常の不動産売買よりも価格が低くなる傾向にあるため、実勢価格をそのまま使うのではなく、一定の減額補正を加えるのが一般的です。


評価方法③ 収益還元法

収益還元法とは?

収益還元法は、その不動産が将来的に生み出すであろう収益をもとに評価を行う手法です。賃貸物件や商業ビルなどの収益物件に向いており、投資家や法人が用いることが多い評価方法です。

計算例(簡易)

年間家賃収入 × 利回り(または還元利率) = 不動産の価値
→ その価値に応じて持分割合を掛け算して評価

メリット

  • 賃貸収入がある不動産の場合、経済的合理性に基づいた評価ができる

  • 投資的な視点からの評価に適している

デメリット

  • 居住用物件など、収益を生まない不動産には不向き

  • 将来の収益予測には不確実性が伴う


評価手法の違いを一覧で比較

以下に代表的な評価手法3種の特徴をまとめました。

評価方法 主な用途 基準 メリット デメリット
路線価方式 相続・贈与時の評価 国税庁が公表する価格 公的資料として使える、手軽に確認可能 実勢価格より低くなることが多い
実勢価格方式 売買価格の参考 市場の売買事例 現実の市場価格に近い評価が可能 地域により情報不足や主観的評価の可能性
収益還元法 投資・事業用物件 将来の収益見込み 投資観点での合理的な評価が可能 収益がない物件には適用できない

共有不動産の持分売却後に残るリスクを警告するサムネイル画像


共有持分の評価はなぜ難しいのか?

他の不動産と「同じように査定できない」ワケ

不動産の査定と聞くと、多くの方が「近隣相場」や「不動産会社の一括査定」などをイメージされるかもしれません。
しかし、共有持分という特殊な権利形態では、これらの方法だけでは正確な評価を出すことができません。

理由は以下のとおりです。

  • 自由に利用・売却できない:共有者全員の同意が必要なため、単独での利用や売却が制限される

  • 物件全体の価値ではなく、部分的な権利に対する評価が必要

  • 市場での需要が限定的であり、買い手が見つかりにくい

こうした制約があるため、一般の不動産評価とは異なる「共有持分ならではの評価方法」が必要になります。

評価方法1:路線価方式とは?

相続税評価で使われる「基準価格」

路線価方式とは、国税庁が公表する「路線価」をもとに評価する方法です。
これは主に相続税や贈与税の計算に用いられるもので、毎年7月に最新の価格が更新されます。

路線価方式のメリットと限界

メリット

  • 国が定めた価格のため、一定の信頼性がある

  • 評価の基準が明確で、計算も容易

デメリット

  • 実際の売却価格(時価)とは乖離しているケースがある

  • 市場の動きを反映していない

  • 共有持分の評価としては「高すぎる」ことが多い

そのため、遺産分割協議や持分売却の実務では、路線価だけで判断するのは避けるべきといえます。

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評価方法2:実勢価格(時価)方式

市場価格に基づいた「現実的な評価」

実勢価格(時価)方式とは、実際に売買されている価格や、近隣の類似物件の成約事例をもとに評価する方法です。
不動産会社がよく使う査定方法で、売却活動に直結することが多いのが特徴です。

実勢価格方式のポイント

  • 現在の市場動向を反映している

  • 買い手が付きやすい価格帯を見極められる

  • 一般流通を前提とした価格になる

ただし、共有持分は特殊な形態のため、**通常の不動産査定よりも「価格を下げざるを得ない」**ケースが多く見られます。
また、物件全体の価格に対して「持分割合を掛ける」だけでは正しい評価にはなりません。

普通の不動産と違って、持分って買う人が限られるから、そんなに高くは売れないってこと?

Jトラスト

その通りです。市場に出回る物件よりも買い手が絞られるため、実勢価格よりも低めの評価になることが一般的です。

遺言書で共有名義の相続トラブルを防ぐ方法を解説するイラスト


評価方法3:収益還元法とは?

投資としての価値を数値化する評価手法

収益還元法とは、物件が将来的に生み出すと期待される収益(家賃収入など)をもとに価格を割り出す方法です。
収益不動産や賃貸物件ではこの方法が一般的に用いられています。

この方法を共有持分の評価に応用する場合、たとえば以下のように計算されます。

  • 収益(例:家賃、利用料) × 継続年数 ÷ 還元利回り = 評価額

ただし、共有持分においては他の共有者の協力がないと収益を得ることが難しいため、
「潜在的な収益力」に留まるケースが多いのが現実です。

収益還元法の課題

  • 想定賃料の見積もりが主観的

  • 持分単体で収益化できない場合、評価が困難

  • 利回りや将来予測によって結果が大きく異なる

そのため、実勢価格との併用や、出口戦略を踏まえた総合的な評価が求められます。

3つの評価方法の違いを比較

以下に、代表的な評価方法の特徴を一覧にまとめました。

評価方法 概要 主な用途 メリット デメリット
路線価方式 国税庁が定めた基準価格を用いる 相続税・贈与税など 客観性・計算の容易さ 市場価格と乖離、実売却には不向き
実勢価格方式 近隣の成約事例などから価格を推定 売却・取得価格の目安 市場反映、実売却向き 共有持分では安くなりやすい
収益還元法 将来の収益を利回りで割り戻す 投資価値の算出など 投資的視点での判断が可能 収益見積もりに主観性がある

上記のように、それぞれの評価方法には明確な特徴と用途があります。
共有持分の評価では、複数の方法を併用しながら現実的な着地点を探ることが重要です。

評価トラブルを防ぐためにできること

弁護士や不動産専門家のサポートを活用

共有持分に関する評価は専門的で、感情的な対立を招くこともあります。
以下のような対策を講じることで、スムーズな合意形成が可能になります。

  • 複数の評価方法で価格を提示する

  • 第三者による中立的な評価書を取得する

  • 共有者間の合意形成は弁護士を介して進める

相続で不動産をもらったのに、自由に使えなくて困っています…

Jトラスト

それは「共有持分」で相続されたことが原因かもしれません。遺産分割協議の段階で適切に対応していれば、回避できるケースも多いんですよ。

うちは兄弟で揉めてて、私の持分の価値を高く見積もられたけど、納得できない…

Jトラスト

その場合は、実勢価格ベースの評価書を取得し、納税目的の「路線価」との違いをしっかり説明すると良いでしょう。

共有持分は「単純な不動産評価」ではなく、法律・市場・心理的要素が絡み合う繊細なテーマです。
早めに専門家に相談し、トラブル回避の布石を打っておくことが肝心です。

名義変更しないと売却できない?共有不動産の登記トラブルを解説した日本語インフォグラフィック


まとめ
共有持分の評価には、「路線価」「実勢価格」「収益還元法」という3つの主要な方法があります。
それぞれの手法には特性があり、目的に応じた使い分けが必要です。
特に売却や遺産分割では、実勢価格に基づく現実的な査定と、共有者間での納得感のある調整が求められます。
評価トラブルを未然に防ぐためにも、専門家のサポートを活用しながら、多角的なアプローチを検討しましょう。